鉛フリーはんだ 並びに鉛フリーはんだフロー槽 に関する研究

鉛フリーはんだ へと移行して以来、現在当社が掌握している主なものとして
下記のような問題点が挙げられます。

 鉛フリーはんだの汎用化において障害となっている問題点
 @ はんだ小手先の食われ現象(小手先の短命化)
 A フロー半田浴槽問題(ステンレス鋼のエロージョン)
 B フローソルダリングの損傷(ステンレス鋼のエロージョン)
 C ウェーブソルダリングの各部品の損傷
 D 鉛フリー仕様のフロー槽とリフロー槽において、はんだが接触する金属全ての損傷
 E その他

従来のSn-Pb系はんだでは上記のような問題が発生していなかったことから
これらは「鉛フリーはんだの弱点(特質)」に起因して発生すると判断し、
解決すべく研究を開始しました。

当社がまず着目したのは、弱点とも成り得る 鉛フリーはんだの特質 でした。

 鉛フリーはんだの特質(弱点)
 ・融点が高い=操業温度が高温な為、耐熱性の弱い部品が損傷してしまう。
 ・ぬれ性に劣る=継ぎ手品質の劣化から不良品が多発し
         廃棄物の増量に繋がっている、
 ・個体金属の溶解能(反応性)が高い
 ・銅金属を主体に、表層部に鉄鍍金、更にはんだ接触部位以外の部分は黒クロムメッキ という三重構造である。

これらの鉛フリーはんだの特質を踏まえ、上記問題点について順に考察すると、
まず、
問題点@ はんだ小手先の食われ現象
     食われ現象が発生する原因となる要素がはんだ小手の融点の高さと小手の構成そのものに起因すると考察。
     原因となる要素は はんだ小手の構成金属の膨張収縮差ではないかと推察し
     はんだ小手を構成する金属(銅・鉄・クロム)の各膨張収縮計数を調べたところ、
     膨張係数は下記の通りであった。

     膨張係数
17 x 10-6
13.8 x 10-6
クロム  3 x 10-6
                         

     この通り、膨張係数の差からも、銅・鉄・クロム という膨張係数の異なる金属で構成されるはんだ小手が
     操業時に高温加熱され膨張する際に相互の金属にストレスを受けているであろうことは明白であり、
     すなわち、このストレスが各金属層のクラック、及びピンホールを発生させ、金属破壊を呼び起こす要因と
     なっていると推察でき、このことはすなわち、
     はんだ小手の食われ現象とは、小手に発生したクラック、及びピンホールからβ錫、α錫が
     小手の内部に入り込み、各層の金属と拮抗することによって生じる、と考察でき、     
     この要因がすべての食われ現象の要因ではないが、極めて大きな要素であるという結論に至りました。

次に、
問題点A〜Eについて考察すると

     フロー浴槽、ソルダリング、をはじめとするステンレス製部品の損傷(エロージョン)という現象も
     その原因となる要素を突き詰めていくと はんだの構成金属(錫・銅・銀)に起因すると推察でき、
     すなわち、フロー浴槽、ソルダリング等ステンレス製部品のはんだに接する部分からイオンが流出し、
     損傷(エロージョン)という現象が生じていると考察できる。


以上の考察結果をもとに、各種実験試験を行った結果、

超硬放電(ペネトロン)という技術により、タングステン分子を放電現象に乗せてステンレスに打ち込むと
処理後の表面がタングステン(WC)100%で構成されることによって硬度があがるだけではなく、
全くはんだを寄せ付けなくなり、かつ、母材金属からのイオン流出をも防ぐことが可能になることを発見しました。